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22/09/11, Sun

国際金融のトリレンマという話を聞いたので、メモ。国をまたがる経済活動を考える上では、資本のことや通貨政策も大事なわけだけど、(1)為替相場の安定、(2)金融政策の独立性、(3)自由な資本移動、は3つを同時に担保するのは不可能、という話。

  • (1)為替安定をあきらめたのが、ほとんどの先進国で、(2)(3)を担保すると為替相場の変動が起こってしまう。
  • (2)金融政策の独立性をあきらめたのが、ユーロ圏や香港で、ユーロ圏内の金融政策は欧州中央銀行が制御するし、香港は米国に連動している。
  • (3)自由な資本移動をあきらめたのが、中国で、ある程度は資本移動を制限せざるを得ない。

だいぶ前にSiPEEDにおじゃましたときに見せてもらったRGBD(深さ方向)カメラがクラウドファンディングに出たようだ。低価格版のMS-010Aが100x100画素で3000円くらい、上位機種のMS-075A-Vが320x240画素で10000円ちょっと。使うかどうかわからないけど、Backしてみるか。

今日は高須さんと、深センの東の方にある大芬へ行ってきた。ここは油絵村(絵画村)とも呼ばれて、画家がたくさん住んでいて、コロナ前には世界中のホテルとかに飾ってあるような有名絵画の模写の多くがここで作られていた。ところがコロナ禍になって、そういう注文が激減して、だいぶさびれている、という話を小耳に挟んだので、実際に行ってみた。

この壁面アートは、以前はあまり見なかった気がする。新ビジネス開拓、ということなんだろうか。

やはりその予想はあっているようで、こんな感じで、画家の養成、フリーランス画家、動画編集、YouTuber養成、みたいな募集が出ている。コロナ前のような油絵だけでは食べていけないので、手広くやっている、ということのようだ。

街自体は、それなりに画家のアトリエもあって、そこまで寂れているようには見えなかった。写真を撮り忘れたんだけど、日曜だからか、主に子供や初心者向けの絵画体験、みたいなのをけっこうやっていた。これも、やむなく始めた新ビジネス、ということなんだろうな。

とはいえ、いまでも、お祝いなどで絵(主に中国の風景画とか縁起物の絵)を贈る、というのはそれなりに市場があって、画家のランクによって値段が変わったりするそうだ。そして最初は注文を受けた模写を描くブルーカラーからで、だんだん自分の作品を売れるアーティストになっていく。日本の伝統工芸だと「お土産品クラス」と「人間国宝クラス」のどちらかしか市場がなくて、どこも伝統工芸は苦戦しているわけだけど、こういう、うまく市場経済に載せるのは、とてもいい方法・文化だな、と思った。

途中、こんな画廊があった。高須さんに教えてもらったんだけど、「世界で一番ゴッホを描いた男」という大芬とそこの画家の映画があって、その映画に出演して有名になった人の画廊のようで、お茶をごちそうになってしまった。絵も以前は1000元ぐらいで売れたんだけど最近は200元ぐらいで、あんまり儲からないねー、とのことだった。ちなみにこの映画の原作は「ゴッホ・オンデマンド」。すごいタイトルの本だ。

22/09/12, Mon

昨日のSiPEEDのToFカメラ、Indigogoで、低価格版MS-010Aと上位機種MS-075A-VをそれぞれBackしてみた。

企業は常に成長しなければ、という話、そんなものかなあ、という思いがずっとあったんだけど、少なくとも働く人の給料は上げないといけないから、最低でもその分は売上を伸ばさないといけない、というのは、そうだな。年齢構成が定常的になったら話は別かもだけど、若い会社ならばそうなる。時間とともに、製品やサービス自体は定常的でもいい場合もあるだろうけど、少なくとも人件費については。もちろんその他にも、金利、家賃、という要因もあって、それが深センのように常に上昇するならば、その分も加わる。

かなりの早い時期に買って愛用していたIoT赤外線リモコンの先駆けともいえるIRkitWebサービスが2022年11月をめどに終了の予定とのことだ。自分でもESP8266版の互換機をつくったり、そのときには作者の大塚さん(2014年12月の観察会でご一緒していた。Makeを仕事にするMakerProの先駆的な一人だと思う)にAPI使用のOKをいただいたりと、とてもお世話になったデバイスでもある。本当に長いこと、提供をしていただいて、ありがたい。

半導体の不良解析・対処についての記事をみかけた。なんとなく知っている話もあるけど、知らない世界もあって、半導体の奥深さを改めて。

昨日IndigogoでBackしたSiPEEDのToFカメラに関連して、ArduBoyという会社もRaspberryPi用のToFカメラをKickstarterに出しているので、こちらもBackしてみた。

今日は沙井にある徳普沙井电子城へ行ってきた。ここは俗に「メカトロ市場」と呼ばれることもあって、電子部品以外にも、モータや直動機構といったメカトロ関連の部品や、それを使う工場の生産機械のお店が多い。数年前に来たことはあったけど、コロナ禍と最近のこういう物理的な市場の役割の変化に伴って华强北の電気街が寂しくなっているように、ここも寂しくなってきた、という話を小耳に挟んだので、実際に行ってみた。(5月に前まで行ったんだけど中に入らなかった

電子城の隣に梱包資材などの市場があるんだけど、そこも相変わらず元気そう。いわゆる「人民巻き」と呼ばれる、荷物をテープでぐるぐる巻きにするのに使う幅広のビニールテープ(いわゆる「ラープ」)や、工場の生産ラインで使う無塵服、制電服、なんてのも売っってる。使い捨て防護服みたいなコロナ関連のグッズも増えていた。

電子城のほうは、相変わらずメカトロ関連や生産機械のお店が多い。

これはネジを向きを揃えてつまみやすくする治具。調べると1万円くらいみたいだ。ほしいな。

7セグメントなどのいろんなLEDユニットなんだけど、これは、形状・仕様のカスタマイズをしてくれるお店だ、というのが、いまならわかる。MOQ(最小発注数)を聞いてみたかったんだけど、あいにく今日は店長が不在でわからないとのことだった

去年チップマウンタを作ったときに、めちゃ調べて買って使ったエア制御関連のパーツ。

「正規ライセンス版」と書いてあるいろんなソフトが売っている。CorelDrawが10元、AltiumDesignerが20元だそうだ。Microsoftとかが海賊版対策として中国限定版の正規品ライセンスを格安で提供している、という話は聞いたことがある(海賊版を使われるよりマシ、という)けど、これは海賊版なんじゃないかな・・・

前回来たときにはまだ開業準備中だった、すぐ隣のビルにも電子部品の市場ができていた。ただしまだオープン直後のようで、お店も少ない。

この乐清市というのは、浙江省の都市で、「100均のふるさと」として知られる義烏(义乌)市の近くなんだそうで、細かいプラスチックの射出成形の工場が多く、こういうコネクタの会社が多いんだそうだ。たしかにここだけでも数軒あった。

めちゃ小さいタクトスイッチもある。

一緒に行った高須さんがドローンを持ってきていたので、少し触らせてもらった。DJIの4万円くらいの機種。スマホにはめるコントローラで制御できて、上下左右や旋回の操作の通りに動くんだけど、細かい姿勢制御はドローン本体でやっているので、静止しているとほとんど止まって見える。ドローンのカメラにもジンバル(カメラを動かす機構)があって揺れ補正をしているのもあって、スマホ画面で見えるドローンからの映像は、ほとんど止まって見える。ほんとに止まって見えるんだな。スマホ画面に地図も出ているので、基本的にはドローンを見ながら操縦するのではなく、地図を見ながら操縦するもの、らしい。空港の近くのように飛行高度などに制限がある区域は、スマホアプリ側で高度などに自動に制限がかかる。高須さんによると、おまわりさんに怒られるのは、子供が近くにいて触って怪我をしそうな場合だけで、ここは飛ばしちゃダメだ、というのはないんだそうだ。数十mより高くまで上げると、ブーンという音もほとんど聞こえないので、他の人が、危ないからやめなよ、みたいに文句を言われることもほとんどないらしい。

その足で、DJIショップへ行ってみた。ちょうど最近話題のDJI Avatarが店頭で試せた。これはドローンのカメラの映像が表示される、いわゆるFPV(First Point View)ドローンで、それがヘッドマウントディスプレイ(ゴーグル)に表示されるので、あたかも自分が飛んでいるように見える、というもの。このゴーグルに頭部の動きを検知するセンサもあって、頭部の動きに連動する、まさに自分の分身(Avatar)のように使えるというもの。たしかに映像伝送の遅れもほとんどなく、鮮明な映像だった。何に使うかいまいち思いつかないけど、面白そうではある。ちなみにドローンとゴーグルのセットで16万円くらい。

22/09/13, Tue

JLCPCBに出していたPCB1種、3Dプリント1種、PCBA3種が届いた。

PCBAはM5Stackでもうすぐ発売予定のNeoPixelたくさん点灯向けのGroveにUSB-Cから5V給電するやつ、それと委託販売分の在庫補充。

それとXiaomiGlassの老眼鏡固定アタッチメント改。プランジャーの入る穴を0.2mm深くしたら、両側にプランジャーをはめた状態でぴったり、いい感じに装着できる。よきよき。

大学ビルの宅配集積所に自分の荷物を取りに行ったら、JLCPCBからのでかい箱があった。注文してる人いるんだな。ビルに入ってる会社だろうか。

今日は先日お会いした方がやっているSiCデバイスの会社におじゃましてきた。

こんな感じでSiCデバイス(MOSFET、IGBT、SBDなどのパワー半導体)の設計・製造をしている。設計は、こことは別のところでやっていて、韓国にも設計部(合弁?協力企業?)があるんだそうだ。ちなみに同じフロアに、もう1つのGPSアンテナ/コネクタの会社、もやっている。

夕方におじゃましてから晩ごはんまで、いろんな話を伺ったんだけど、技術をビジネスにすることの大切さ、とともに、そのシーズの技術自体(それはいまの中国にかけている分野が多いこともわかっている)の大切さ、について、改めて理解を深めた。さて。

22/09/14, Wed

今日は、Heroad Investmentsという投資会社(VC)にいってきた。投資会社は、ベンチャー企業に資金を投資するわけだけど、一般には、簡単に言うと「儲かるかどうか」を基準に投資先を選んだり、投資先に助言(介入の場合もある)することになる。まあ資本主義・市場経済はそういうもの。このHeroadは「善投資」というポリシーがあって、投資先が社会的に「善」か、を大きな判断基準としている。例えば障害者の社会活躍支援の事業をやっている会社、とか、労働環境改善につながる事業をやっている会社、などが投資先となるし、それを強化するように事業内容について助言をしたりもする。

個人的には、グローバル資本主義の「儲かればなんでもあり」というのは、どうなんだろう、という疑問がずっとあったんだけど、それに対する明確な解の一つ、と言えると思う。学生のインターン先として受け入れてもらえそうなので、とてもいい勉強になると思う。

これに関連して、「正能量(zheng4neng2liang4)」という言葉があることを知った。元々はイギリスの心理学者の本のタイトルのようなんだけど、特にネットで、批判などのネガティブな情報ほど拡散されやすい状況に対して、「もっとポジティブな情報を広めよう」という気分から広がった流行語のようなもので、特に中国ではネットで流行するのいならず、テレビや新聞などでも取り上げられて、より広まった(一般に中国政府は流行語の拡散をサポートすることは少ないが、これは積極的に広めている)、という言葉のようだ。

席上でてきた話のメモ。四川(si4chuan1)省の省都の成都(cheng2du1)は、最近会社、特にテック系の会社(の開発部署)が移転するケースが多いんだそうだ。深センよりもまだ家賃が安くて働けば家を買える可能性が高いこと、そして深センほどの急速な成長を求められない(深センは金利が高いのが、成長を促す大きな要因)、のが大きな要因なんだそうだ。ふむ。

午後は、M5StackのAllen氏の紹介とのことで、DH-Roboticsへおじゃましてきた。ここは産業用ロボット向けの「指先」部分がメインの商品の会社。かなりよい製品で世界的によく使われているようだ(正直、専門外で、どれぐらいよいものかは、ちょっとよくわからない)。

この会社が入っているビルのあたりは面白いエリアで、場所はMicrosoftやTensentがあるエリアにほど近いんだけど、「虚擬大学園」というエリアで、いろいろな大学のサテライトオフィスがある。

北京理工大や華中科技大学のビルもある。

南京大学も。

その敷地内で、ちょっと大きめの掃除ロボットが何台か動いていて、なんだろうと思ったら、学生さんがデータを取りながら実験をしているようだった。すぐとなりにDH-Roboticsのような関連会社があるので、機材を調達したり、カスタマイズの注文をしたり、というのもやりやすいし、会社のほうも、「大学と共同研究やってます」というので補助金をもらいやすい、というメリットもありそう。深セン全般の話だけど、やはり、大学と産業界の距離がすごく近い。

先日TaoBaoでポチったこれ、1週間近く発送されない。発送を促しても連絡なし。よく見たら発送元が大連。大連領事館からのメルマガをみてると、けっこうコロナ的にヤバくてロックダウン箇所も多いようだ。たぶんそれだろうな。やむなくキャンセル。日本からTaoBaoするときにポチろう。

22/09/15, Thu

こちらにいると、いろんな人から「You、こっちに会社つくっちゃいなYo!」と言われるんだけど、そうすることの意味というかメリットが、いまいちよくわからなかった。いろいろ調べたり話を聞いたりすると、主なメリットはこんなところかなあ。もちろん何をやりたいか、何ができるか、によって変わるだろうけど。(これは、今回のようにiMakerbaseから法人登記手続きや運営費などのサポートが受けられるという前提)

  • 会社登記によって複数の株主(=仲間)が生じる。iMakerBaseの場合は一人取締役を置き、数%の出資をする
  • 個人保証などはつけない、つまり資本金がなくなったら解散し、借金はしない、というのが順当
  • 会計処理は必要。外注で2000元くらい
  • 中国での「法人格」がもてる
    • 自分や関係者にビザが出せる
    • オフィス(住所)やSIMカード、銀行口座等の資産を持ったり借りたりできる
    • 中国でビジネスをする場合の経理手続きができる。例えば個人宛てに報酬を支払うと40%の税金がかかるが、法人宛てではこれよりずっと少ない。また发票(fa1piao4)を使った送金・支払いができ、税金の還付設けられる
    • 法人税は、少なくとも深センは科学技術分野で創業5年くらいは免除
    • 会社の収入をそのまま自分宛ての給料として支払うことで、会社としての収益をゼロにする、こともできる
    • 企業や研究機関と共同プロジェクトが起こせ、補助金を受ける資格が生まれる
    • Alibabaに店舗を持てる

まだ具体的な活用のイメージがわかないけど、例えば中国で調達した部材を少し加工・整理して日本宛に送ったりする(その作業をiMakerbaseの人か誰かに報酬を支払ってやってもらう)、のは、一例かなあ。もうちょっと考えてみよう。

南方科技大の研究環境について、もう少し詳しく知りたくて、安先生と少しお話。

まずRA (Research Assistant)。こんな感じの大部屋があって、けっこうな人数の人がいる。これは、中国の大学ならどこでもあるシステムというわけではなくて、南方科技大独自(?)のシステムだそうだ。いわゆる「研究員」で、教員が雇用できる(公募→面接して採用)。期限付き助成金のプロジェクトで、その研究の実施のために雇用する場合がほとんどだが、パートタイムではなくてフルタイム。学生からみると、就職先の一つ、という認識。てっきり南方科技大を卒業/修了した人が、企業への就職先を見つけるまでの一時的な仕事なのかと思っていたんだけど、そういうわけじゃない。ほとんど他の大学卒の人なんだそうだ。世界だとどこでも「ポスドク」という博士号をとったあとの研究職、という職業はあるけど、このRAは学部卒や修士卒、というのが大きな違い。

ちなみに南方科技大では、いわゆる講座制はなくて、教員ごとに独立して研究室を運営しているんだけど、これは中国の大学では珍しいんだそうだ。どうしても研究単位が小規模になるけど、独立した研究をやりやすい、というメリットがある。

研究資金については、実は大学からの「基盤研究費」に相当するものは、ほぼゼロなんだそうだ。新任時だけ、研究立ち上げとして手厚い補助がある(100万元x5年、とのことなので総額で1億円近い)が、それ以降はほぼゼロ、つまり外部資金をとらないといけない。ただ、どこの大学にもいるエース級教授(院士(yuan4shi4)、南方科技大では59人が、ほとんど深セン市から助成金はもっていってしまって、若手にはぜんぜんまわってこない、というのが悩みのタネなんだそうだ。ちなみに「院士」は高い権威を持って政府への提言を求められるなどの役目があり、広報活動において輩出した院士の数を示す、なんてことも多いんだそうだ

ついでに、EDAツールのライセンスについても聞いてみた。IC設計だと、Cadence、Synopsys、Mentorあたり(いずれも米国製)のツールが事実上の標準で、SMEでもそれらを使っている(中国国産EDAも売り込みはあるんだけど、誰も使ってない)、という話は聞いていた。ただ、ふつうに買うとめちゃ高くて、1ライセンス1億円くらいするものもある。SMEで大学向けライセンスをまとめて購入していて、それをみんなで使っている、とのことだった。特に「中国向け割引ライセンス」というのはないようだ。

明日、延期になっていた量子コンピュータのSPINQに行けることになったので、「量子コンピュータが本当にわかる!」という本で予習。量子コンピュータの根本のところは、実はよくわかっていなかったので、改めて勉強になる。ポイントとしては、普通のコンピュータ向けのアルゴリズムとは根本が違う、量子コンピュータでしか使えない、チートともいえるアルゴリズムが使える問題は劇的に速くなる可能性がある、ただし結果を観測する時点で量子状態が収束するので観察法は要工夫、また演算の前後で情報量が変化しない可逆の演算しかできない、と。量子力学や論理回路、コンピュータの原理の一般論は知っている内容なので読み飛ばしたけど、文中にあった量子力学に関して「今でも量子力学に納得したというよりは慣れたという感覚に近い」というのは、わかりみが強い。

iMakerbaseには金型製造と射出成形の工場があるんだけど、実際のところどれぐらいの費用と時間がかかるのか、技術担当の钟(zhong1)さんに聞いて(もらって)みた

  • 3Dデータ(STEP形式)を渡せば、あとはやってくれる
  • 期間は1ヶ月程度
  • 金額はサイズ、複雑さによって変わるけど、単純なものなら1.5万元ぐらい、ネジがきってあるとかのもうちょっと複雑なものだと4万元くらい、はめあわせのあるケースだと3万元ぐらい。キーキャップのような小さいものだと、複数まとめて1つの金型(3万元ぐらい)にすることもできる

思ったよりリーズナブルだな。

VeriSiliconという会社をみつけた。"Silicon Platform as a Service"というキャッチフレーズだけど、この前見つけたEliteMooreと同じく、チップの設計・製造のワンストップサービス。

22/09/16, Fri

今日は、高須さんのところに向こうから連絡があったというStarFiveへ。RISC-VプロセッサのIPと、それを使ったSoC、ボード(SBC)の会社で、本社は上海で、社員は300人くらいの、まあまあ大きな会社。深センにも最近オフィスができた(10人くらい?)。

いまKickstarter中のVisionFive2は、LinuxがうごくRISC-Vボード。AI向きとはいっているが、アクセラレータが入っているわけではなさそうで、メインプロセッサ(SoC)のJH7100のコアは、SiFiveのU74(4コア)のようだ。SiFiveとStarFiveは強いパートナーシップ、と書いてある。U74のIPを使って、ペリフェラルなどを揃えて自前SoCにした、ということかな。このボード、カメラは4系統まで接続できるなど画像・AIに強い、と書いてあるけど、専用のアクセラレータ回路があるわけでもなさそうで、普通のSBCに見える。どうなっていくんかな。とりあえず個人的にBackしてみた。

ちなみにiCEasy(Alibabaみたいな電子部品・機器のB2BのECサイト)でも扱っているようだ。

午後は、量子コンピュータをつくっているSPINQへ行ってきた。事前に「量子コンピュータが本当にわかる!」という本で予習していた、量子コンピュータの基礎はこんな感じ。

  • 普通のコンピュータ向けのアルゴリズムとは根本が違う、量子コンピュータでしか使えない、チートともいえるアルゴリズムが使える問題は劇的に速くなる可能性がある
  • それ以外の問題は、普通のコンピュータと同じことしかできない(論理演算に基づく情報処理処理)
  • 「情報処理」は、「量子ビット(qbit)の状態を外部から変化させる」操作。そのやり方は量子ビットの物理的実態によって様々。
  • 結果を観測する時点で量子状態が収束するので結果は確率的。つまり1回「情報処理」をしたあとで結果を観測すると、可能な量子状態のいずれか1つが「確定」する。(量子力学を勉強した人なら、電子の二重スリット実験で、電子が到達する場所は一箇所、とおなじ、というと理解しやすいかも)
  • 1回だけではそれが「正解」かはわからないので、それを何回も繰り返し、「もっとも出現数が多い結果」を正解とみなす。それが統計的に有意な差になるまで繰り返す(中央極限定理から√Nくらい)ことになり、その回数が情報処理に要する時間を決める1つの要因(もう1つの要因は、1回の情報処理にかかる時間)
  • 演算の前後で情報量が変化しない、可逆の演算しかできない。つまりANDのように情報量が減る演算は実現できず、NOTとXOR(に相当する演算)が基本になる。
  • そのため、外来ノイズで量子状態が変化してしまうと、それを回復する方法がない、つまり外来ノイズに極めて弱い。そのため極低温に冷却する、などの工夫が必要
  • 量子ビット(qbit)を物理的にどう作るかは、いろいろな方法がある。例えば光子、ジョセフソン素子、原子核のスピン、など。
  • 量子ビット(qbit)が多いほど、大規模で複雑な問題を扱える。最適化問題でも解けるものがあり、それ用のアルゴリズムを使う量子コンピュータが、いわゆる量子アニーリングマシン。例えば2qbitでは、「2^2=4通りの量子状態を同時に調べる」ことに相当する処理ができるわけなので、まあ正直、大した問題は解けない。
  • 大規模になりがち&解ける問題が限られる(ただしハマるとめちゃくちゃ高速)ため、現在のコンピュータを置き換えるものではなく、サーバ的に使うのが現実的。
  • Googleが2019年に「通常のコンピュータでほぼ解けない問題を量子コンピュータで解いた(量子超越性を示した)」というのは、「量子コンピュータで解ける問題を、通常のコンピュータで解いたらめちゃくちゃ時間がかかる」ことを示したもの、つまり「量子コンピュータが解ける問題を設定して両者を比較して量子超越性を示した」のであり、「量子コンピュータがどんな問題を通常のコンピュータよりも高速に解ける」というのは誤解。

SPINQでは、36qbitの大規模なもの(10mK程度の極低温まで冷却する大規模なもの)も開発している(↑はサファイアウエハで作った量子ビットのチップ)が、個人的に興味があって、今回メインで話を聞いてきたのは、小型・低価格のもの。2qbitの機種が2つあり、デスクトップPCくらいの大きさの”Gemini”が45000USD(600万円くらいか)で、すでに東大を含む世界のいくつかの大学・研究機関に販売している。今回メインでみてきたのは、更に小型のインクジェットプリンタぐらいの大きさの"GeminiMini"で、7000USD(100万円くらいか)。

いずれも量子ビットの物理実体はNMR(核磁気共鳴)を使っている。NMRは原子中の原子核の「スピン」という量子状態を観測する方法。スピンは原子核の自転運動に例えられる物理量で、スピン数が半奇数(1/2の奇数倍)の原子核では正転(上向き)と逆転(下向き)の2つの状態をとりえるが、実際には量子状態であり、「この原子核のスピンが上か下か」は、観測するまでは「上と下が重なった状態」であり、観測した時点で、上か下かのどちらが確定する。そのスピンの状態を観測・制御する方法がNMRで、磁界を加えた状態で、原子に電磁波を照射すると、固有の周波数で共振(共鳴)する(電磁波を強く吸収・放出する)、という現象。そしてその周波数がスピン状態によって異なる(ゼーマン効果)ため、NMRを使ってスピン状態を観測できる。観測する以外にも、スピン状態を変化させることもできる。なおNMRは常温でも観測できるが、温度で特性が変わるので、温度は一定に保つ必要がある。

NMRを観測するシステムは、比較的一般的な構成。永久磁石でつくる磁場の中に対象物質を置き、そこに周波数を変えながら電磁波を照射し、その吸収を計測する。共鳴周波数は数十MHz程度なので、まあ電磁波としてはそんなに扱うのが難しくない周波数なので、ミキサを使わずに直接ADC/DACで扱える。(放大器=アンプ)

中央の2つの丸いのが永久磁石で、まわりに制御回路がある。まあまあ強い電磁波(マイクロ波)を発生・制御するので、強めのMOSFETが並んでいたりする。

ポイントは、対象物質で、必要な量子ビット数の、スピン数が半奇数の別の原子(原子核)をもち、かつ安定な物質である必要がある。2qbitのこの機種では、"(CH3O2)2POH"という化合物を使っている。この中の、原子番号または質量数が奇数の水素(H)とリン(P)が、それぞれ2つのスピン状態をとりえるので、この化合物として2^2=4通りのスピン状態をとりうる。理論上、スピン数が奇数の原子(原子核)がN個の化合物を使えば、N[qbit]の量子ビットになる。当然ながら数が増えれば、化合物の安定性、NMRの計測精度(各原子核のスピン状態の分離)から、実現が難しくなっていくので、そこが技術開発との兼ね合いとなる。

なおマイクロ波のマイクロ波の照射状態と照射時間で、それぞれの原子核のスピン状態を変化させられる、とのことだった(この原理は、まだよく理解していない)。スピン状態を変えることは、量子算子に相当するので、それを設計した順序で行えば、設計通りの量子演算、つまりプログラムを実行することになる。なお「量子状態が壊れるまでの時間(緩和時間)」があって、それがこの化合物だと数十秒程度で、その時間内に何回実行できるか、が、実行可能な量子演算の数を決めることになる。"Gemini mini"では2qbitに対しては10回ぐらい、とのことだ。

最後に量子状態を観測すると、確率的に各量子状態の原子の数の比がわかる、その比が統計的に有意に分かれるまでに必要な演算回数が総演算時間を決めることになる。試しに「何もしない」演算を実行してみたら、00/01/10/11の4状態の確率がすべて25%程度になった。もちろんバラツキはって、この写真のときはキャリブレーションを十分に行わなかったため、15%〜35%くらいのバラツキがあるが、まあ見方を変えれば、量子状態をちゃんと観測している、ともいえる。

量子演算の組み立てはGUIでタッチパネル上でドラッグしたり、アルゴリズムのライブラリから呼び出したりと、かなり直感的にできる。

そして実行開始してから30秒ほどで結果が出る。このプログラムの例では、"11"が有意に確率が高くなっているので、これが結果、ということになる。

正直、2qbitで「実用的な問題」は解けない。4通りのなかから正解を探す、ことしかできないわけだから、どう考えても人間のほうが速い。つまりこの量子コンピュータは実用的ではないんだけど、彼らも「教材用」と位置づけているように、教育的な効果は絶大だった。それまで「よくわからないけど、すごそう」というぼんやりとした理解だった(大学で量子力学をある程度勉強していてもこの程度)のが、もちろん事前の予習もあるけど、実物を目の前にして、ドラッグしてプログラムを組み、その場で量子演算が実行されて、確率的な結果が表示される、という現象を目の前で見てしまうと、量子コンピュータをより深く理解できた、ように思う。価格的に個人で気軽に買えるほどではないかもだけど(実用性はゼロだし)、それでも、量子現象、量子コンピュータを学んでいく大学や学校では、教材としては絶大な効果があるんじゃないかと思う。まさに「百聞は一見にしかず」。

ちなみに”Gemini"は「双子座」で、量子ビットが2qbit、からつけた名前のようだ。もっと大規模な機種には「天秤座」という名前がついている。

夕方は、本当にいろんな経験をさせてもらったM5Stackに挨拶へ。真ん中にあるのは、延期になってしまったIoT展のために作ったM50Stack。中にメカが入っていて、ういーんとバラける展示デモ用。M5Stackサイズで作ってみようかな、と思った。

設計していたGrove系統にUSB-Cから+5Vを給電するUNIT、部材の一部が遅れていて、生産ラインも混んでいたんだけど、なんとか生産が(一部だけでも)間に合ったようで、サンプル品をいただいた。Webショップでも販売開始になっているようだ。これで2つ目の製品、いろいろと感慨深い。

TaoBao公式ショップにも出ていた。

あわせて、試作品のATOM Flyの改良版(v2.0)を預かってきた。これは国際高専の伊藤先生という方がドローンの姿勢制御にめちゃめちゃ詳しくて、v1.0のときもチューニングなどをしているんだけど、ちょうどタイミングがあったので、持って帰国することにした。

あわせて、いくつか試作品を見せてくれた。これはACラインの片側にはさんでON/OFFするリレー入りマイコン。電源はどうするんだろう、と思ったら、はさむACラインに常時少しだけ電流を流していて(大きめの抵抗をはさんである)、そこの電位差から電力をとる受け取る方式らしい。へえ、そういう電源に寄生するみたいな方法があるのか。

こちらは円形液晶を使ったもの。ネジをきってあって、いろんなケースにねじ込んで使える、というもの。ほほう。

先日の会社をつくる、という話に関連して、自社株というものについて、話を聞いたり勉強したりしたことのメモ。例えば、自社株(全10,000株)の10%(1,000株)を1000万円で「売る」とする。ただしこの時点では株式が市場に公開されていないので、投資家や身内などに、出資を受けるために売る、ということ。こういう「売る」タイミングを「ラウンド」といって、最初のラウンドは「ラウンドA/Angel Round」と呼ぶ。この例では、この時点での時価総額は1億円ということになる。もちろんその価値があるかどうか、は、その株を買う人(投資家)の判断、ということになる。(その価値があると判断すれば買う=出資する)このラウンドの期間は、株の価格を固定しておく。この例では「1%(100株)=100万円」で固定しておく。

その1年後に、会社が成長して、追加で資金調達をしたくなった、とする。そのとき、自社株を増やす(例えば全40,000株)、という方法を取る。通貨だと単に増やすだけだと価値が下がる(インフレ)けど、成長中の企業の株は、増やしても価値が下がらない。この時点での時価総額は4億円、ということになる。そして次のラウンド(ラウンドB)で、同じく「自社株の10%」を売って資金調達をするとする。この時点では10%=4,000株、と増えている(パイが大きくなっている)のがポイントで、その金額は4000万円となる。この時点では1%(400株)=400万円ということになる。

最初のラウンドAで出資した人にとっては「出資した株の価値が上がった」ことになる(ただしそれを売る方法が原則としてない(株式公開前なので)ので現金化することはできないが)。つまり「1%」は変わらないが1%=400株に増えているから、追加で300株が配分されることになる。

このとき、ラウンドBで出資する人にとっては、「ラウンドAで出資した人が、おいしすぎるんじゃ?」という不満になりうる。もちろん、ラウンドAでの出資は初期リスクがあるから当然ではあるんだけど。そこで、ラウンドA出資者に追加で配分するのを交渉して例えば150株で折衷する、なんてこともある。

22/09/17, Sat

朝ごはんは、肉まんを駅向かいながら食べ歩き。1.5元。

今日の午前は、华强北に行ってきた。特に用事はないといえばないんだけど、ある意味、今回のサバティカルの原点とも言える場所で、その空気を吸いに来た。たぶん今回はこれが最後になるんじゃないかと思うと、感慨深い。

思えば2013年に別件で香港に来た帰りに、夕方の飛行機までの時間に「噂に聞く华强北を見てみよう」と初めて深センに来た。そのときは30分くらいしかいられなかったけど、あまりにも衝撃を受けて、こんどは札束を握りしめて来よう、と心に誓ったのだった。その後、MakerFaireに来たり、学生をつれてきたり、空振りツアーで企業訪問したりとかして、サバティカルで半年間来ようと思いたって現在に至る。そして今回の半年間の滞在では、本当にいろいろな経験ができた。

华强北そのものは、いろいろな環境の変化という時代の流れにおされて、以前のような活気がなくなった、オワコンなんじゃないか、という話も聞くようになった。実際、今回は半年間いたけど、行ったのは5回くらいじゃないかと思う。それでも、やはり「原点」とも言える場所なのは、今でも変わらない。ありがとう、华强北、また来ます。

SEGビル2FにあるMJのお店。

いつも行っている工具屋さん。

あいぽーん。

午後、南山で日本人向けの塾をやっている山家さんが企画された講演会につづいて、以前見学におじゃましたときに少し見せたM5Stackに子どもたちが興味津々だったことから、ハンズオンを企画してもらった。本来は現地で実機を触りながら、の予定だったんだけど、オンラインのみになってしまったので、UIFlow画面と実機をみせながら。もともとはデータサイエンスの入り口としてIoTを、ということをやられている方で、そのような目的にはM5Stackは「やりたいことに集中できる」という意味で最適なんだと思う。


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